「長持ちしないパンのために開発された冷凍用保存袋」という笑えないジョーク

とある企業では「会議削減のための会議」というものがあるそうです。ジョークのようですが本当です。どうやら人は、問題の本質から目を背け、浅はかな足し算で問題解決を試みるのが好きなようです。

最近、ある記事を読みましたが、そのジョークとよく似ていました。それは、巷で騒がれている「高級食パン」なるものを「冷凍保存するための専用袋」(もちろんプラスチック製)が売れている、という記事です。

この事実の中にはあまりにもたくさんのジョークがあるので、ひとつひとつを話しているときりがないのですが、例えるなら、慢性的にお腹が痛い人が、その原因を知ろうともせず、胃薬を買ってひたすら飲み続けているようなものです。いい胃薬が買えてよかったですね。でもこのジョークは面白くとも何ともありません。

一方で天然のルヴァンで長時間自然発酵させたパンはどうでしょうか?

天然ルヴァン。酵母菌、乳酸菌、酢酸菌などの多様な微生物が共生している。(写真:BECK)

<私たちが勧める私たちの天然ルヴァンのパンの保存方法>

・厚めの「綿・麻」の布に包んでください。(布が薄い場合は二重にしてください)

・パンが呼吸できなくなるのでビニールやナイロン、プラスチック製のものには包まないでください。

・冷蔵、冷凍はしないでください。

・保存は風通しの良い涼しいところで大丈夫です。

・それで「1週間」は美味しく保存できます。

・表面が硬くなったら霧吹きで軽く表面を湿らせて厚めにカットし、軽くトーストしてください。

・包む布も頻繁に洗わなくて大丈夫です。粉やパンくずを落として乾燥をさせてください。

??なぜ天然ルヴァンで自然発酵させたパンはそのような保存が可能なのでしょうか??

主な理由は2つあります。

<pH>

天然ルヴァンには酵母菌の他に乳酸菌や酢酸菌が多く存在し、酵母菌によるアルコール発酵だけではなく乳酸・酢酸発酵が盛んに行われ、ルヴァンの中に乳酸や酢酸といった有機酸が生成されます。これらの有機酸はルヴァンのpHを下げ、パン生地を酸性にします。生地が酸性になるため、パンの腐敗やカビの原因となる他の雑菌の繁殖を抑えることができるのです。

<保水力>

有機酸(特に乳酸)にはタンパク質構造を緩めるという働きがあります。水分子はその緩んだタンパク質構造の中に入り込みやすくなります。パン生地に含まれるグルテンに代表されるタンパク質構造は、ルヴァン内の有機酸の働きによってその結合が緩まることで保水という働きを持つことができます(また、たんぱく質構造の弛緩は消化を助けます)。保水力の高いパンは、乾燥にも強く劣化が遅いのです。1週間経った私たちのパンをオーブンでトーストしてみてください。オーブンのガラス面がまだパンから出る湯気で曇ることに驚かされるでしょう。

天然ルヴァンのこれらの機能は、自然の微生物の働きの賜物であって、人間は特に何もしていません。ただ安全で上質な小麦粉と水を適量混ぜるだけです。これは自然の恩恵です。

反対に、イーストを添加し、大量に、速く、見た目のボリュームを出すという人間の都合を目的とした巷の「高級(これもジョーク)食パン」といったパンには、天然ルヴァンのパンが持つ保存性は当然備わっていません。だから専用の冷凍保存袋というわけです。

イースト、保存料、油脂、酸化防止剤、増粘剤、pH調整剤、抗菌剤、香料、農薬…。これらの発想もプラスチックの冷凍保存袋と同じで、タチの悪い全く笑えないジョークです。問題を解決するのはテクノロジーでも薬品でも浅はかな足し算でもありません。

問題解決のヒントは自然が教えてくれているのに、人はそこに目を向けないだけなのです。